バンパイア君は私に甘々でメロメロ
その日、職場に緊張した空気が走った。

「……これ、どこで間違えたの?」

すみれはモニターを食い入るように見つめながら、資料をめくる。

隣には、無言の黒川。

「仕入れデータの数字が、一桁ずれてる」

すみれはキーボードを叩きながら、冷静にデータを見つめた。

「急ぎで再集計するから、黒川くんは取引先に連絡して。先方に数字訂正の説明して。私、先に修正済みの資料を作るから」

「……はい」

すみれは黒川を見て、小さく息をついた。

「大丈夫。私も手伝うから」

そう言う声は落ち着いていて、いつもの“甘く翻弄されるすみれ”とはまるで別人だった。

「はい。先方に送る書類」

「……ありがとうございます」

その後もすみれがテキパキと後処理をこなし、大きな問題にはならずに済んだ。

ほっと胸を撫でおろすすみれ。
だが、休憩スペースに移動した途端、黒川に腕を掴まれた。

「……ちょ、黒川くん?」

黒川はすみれを壁際に追い込むようにして、低い声を落とした。

「……勘違いするんで、やめてもらえますか」

「……え?」

「そういうの。優しくされると……俺、勘違いするんで」

黒川の瞳には、悔しさと、熱っぽい感情が滲んでいる。

「……俺のこと、後輩としてしか見てないなら、優しくしないでください」
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