バンパイア君は私に甘々でメロメロ

7

「拗ねてないですから」

そう言い残して去った黒川は――
本当に、それきりすみれに近づいてこなくなった。


「黒川くん、この資料……」

「後で確認します」

そっけない声。
目も合わせず、さっさと自分の席に戻ってしまう。

(え、えぇ……?)

さらに次の日も。

「黒川くん、ちょっとこれ――」

「俺じゃなくてもいいですよね。それ」

(……え?)

それまでなら、何かにつけてすみれにまとわりつき、甘い視線を送ってきた黒川が、
完璧に業務モードで距離を取ってくる。

(え、なにこれ。避けられてる?)

すみれはもやもやとした気持ちで、書類をまとめる。
本来なら、黒川に煩わされないぶん仕事に集中できるはずなのに。

(なんで……こんなに、寂しいの……?)

寂しくなんか、なりたくないのに。
むしろ、あんなに黒川にドキドキさせられるのは疲れるから、距離を置けるなら楽なはずなのに。

なのに。

今はやたらと静かな自分のデスク周りが、寒々しく感じる。
黒川が視界に入っても、もうあの甘い目でこちらを見てこない。
笑いかけてこない。
ふとした隙に触れてくる指先もない。

(……私、変だ。ほんとバカみたい……)

仕事中にため息をつきそうになり、すみれは慌てて口を押さえた。
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