バンパイア君は私に甘々でメロメロ

8

黒川は荒い息を整えるように、一度目を閉じた。
そしてゆっくり、すみれを見つめ直す。

「俺……信じてもらえないかも知れないですけど」

声は低く、けれど必死で。

「本当に、バンパイアみたいなもんで」

「……は?」

すみれの目が見開かれる。

「貧血になると、誰かの血を舐めると……よくなるんですよ。あんまり持ちませんけどね」

黒川は苦笑を浮かべるが、その顔は青白くて、全然余裕なんかない。

「今日はそれに変わる薬を、家に置いてきちゃって」

「黒川くん、それ……」

「こんな姿、先輩に見せたくなかったですけど……」

黒川は唇を震わせながら、震える手で、すみれの背中を撫でる。
その指先は、冷たさが伝わった。

「すみません。一瞬、身体……貸してください」

すみれは心臓がバクバクと暴れ出すのを感じた。
逃げたいのに、黒川の目を見たら逃げられなかった。

「……ど、どこ……?」

「ここ」

黒川はすみれの右手を持ち上げ、薄い紙で切った中指の切り傷を見つめる。

「ほんの少しでいいんで」

声はかすれているのに、妙に甘い響きを帯びていた。
すみれは頬が熱くなるのを必死で堪える。

「……っ、黒川くん……」

「先輩のが、一番効くんで」

「なっ……!」

黒川はすみれの右手中指をゆっくり顔を近づけ、唇につける。
吐息が、すみれの肌にひやりと触れた。

「……いいですか?」

黒川が目を伏せたまま、切なげに問いかけてきた。
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