バンパイア君は私に甘々でメロメロ

9

二人は守衛さんに追い出されるように会社を出た。
外は夜風がひんやりしていて、さっきまで熱を帯びていた頬を、少しだけ冷ましてくれる。

けれど、黒川はすみれの手を、ずっと離さなかった。

「……黒川くん、もう放していいよ」

すみれがぼそっと言うと、黒川は首を横に振る。

「やです」

「子供じゃないんだから」

「子供じゃないんで」

黒川はぴしゃりと言い返し、握る力を少し強めた。

夜の街灯が、二人を並べて照らす。

「……送っていきます」

黒川が静かに言った。

「……いいよ。ひとりで帰れるから」

すみれがやっとの思いで言うと、黒川はしばらく黙っていた。
そしてふっと息を吐くように言う。

「……いや、今の先輩の顔、やばいんで。一人で帰せません」

「?!! どういうことそれっ」

すみれは慌てて立ち止まる。

「……顔が、めちゃくちゃ赤くて。目もうるうるしてるし。なんか俺にキスされたいみたいな顔してる」

「してないっ!!!」

すみれは慌てて手を振り払おうとするが、黒川は離さない。

「してます。しかもその顔で夜道歩いてたら、絶対俺以外の男に絡まれる」

「か、か、絡まれないわよっ!!」

「絡まれる。だから送っていきます」

「黒川くんっ!!」

黒川はにやっと笑った。

「先輩が俺以外の誰かにその顔見せるの、嫌なんで」

「……っ!!」

すみれの顔はさらに赤く染まった。
けれど結局、黒川の手を振りほどけないまま。

二人は手を繋いで、夜風に吹かれながら家路を歩き始めた。
< 25 / 46 >

この作品をシェア

pagetop