バンパイア君は私に甘々でメロメロ
すみれの心臓はずっと速いままだった。

「……黒川くん」

すみれが、ぽつりと言った。

「……私もね」

黒川が少し驚いた顔をする。

「え?」

すみれは視線を落として、玄関のタイルをじっと見つめた。

「……黒川くんのこと、見ないようにしようって思うのに……」

ゆっくり息を吐く。

「……気づくと、目で追っちゃうの」

黒川の目が、ほんのり見開かれた。

「先輩……」

「……だって、仕方ないじゃない」

すみれが顔を上げると、そこには黒川のまっすぐな視線。
街灯に照らされて、黒川の瞳はまるで夜の深い紅のように艶やかで、熱を帯びていた。

「……だって、黒川くん……」

すみれが小さく笑う。

「いつも私のこと、ちゃんと見てるんだもん」

黒川が息を呑んだ。
そして、堪えきれないように笑みを浮かべる。

黒川がもう一度強く抱き締め、ぐいっとすみれを引き寄せた。

壁際に追い詰められるようにして、すみれは背中を門扉に押しつけられる。

「黒川く……」

「先輩、俺のこと見ちゃうなら――もっとちゃんと、俺を見てください」

言い終わるか終わらないかのうちに、黒川の唇がすみれの唇をそっと塞いだ。
深い、熱を帯びたキス。

すみれは一瞬、目を大きく開けたけれど――
すぐに瞼を閉じて、その甘い感触に身を委ねてしまう。

「……ん……」

黒川は名残惜しそうに唇を離すと、小さく囁いた。

「先輩の血も、気持ちも……ぜんぶ俺のにしたい」

すみれは、顔を真っ赤にしながらも、黒川の顔をみつめた。

「はい、ばかなんです、俺。先輩にばかって言われ続けたいです」

黒川がいたずらっぽく笑う。
そしてもう一度、今度は優しく、キスを落とした。
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