バンパイア君は私に甘々でメロメロ

10

夜の静寂の中、二人はまだ寄り添うように立っていた。
すみれは、胸の奥が熱くて落ち着かない。
そして意を決したように、そっと口を開いた。

「……黒川くん」

「はい?」

黒川はすみれを見つめる。その目はまだ甘い熱を帯びている。

すみれは視線を逸らしながら、小さな声で呟いた。

「……うち、入ってく?」

黒川の目が一瞬、大きく見開かれた。

「えっ」

「い、いや、その……こんな時間だし、帰るのも大変だし……」

すみれは顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせた。
黒川は数秒黙り込み、それからふっと笑った。

「……先輩」

「な、なに?」

黒川は、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

「今日はやめておきます」


すみれは目をぱちぱちさせる。黒川はその顔を面白そうに見つめた。

「だって……先輩のこと、めちゃくちゃにしそうなんで」


すみれの顔が一瞬で真っ赤になり、目を丸くする。

「な、な、なに言って……!!」

「本気ですよ?」

黒川が甘い声で囁いた。

「さっきの先輩の顔、やばすぎたんで。俺の理性、もうギリギリです」

すみれは耳まで真っ赤になり、両手で顔を覆った。
そんなすみれを見て、黒川は小さく笑いながら、そっと彼女の頭を撫でた。

「……だから今日は帰ります。また、ちゃんと誘わせてください」


すみれはますます顔を隠して震えていた。

黒川は最後にすみれの唇に軽くキスを落とすと、名残惜しそうに手を離した。

「じゃあ、おやすみなさい、先輩」

「……おやすみ……」

黒川が帰っていく背中を、すみれは赤い顔のまま見送るしかなかった。

夜風がひんやりと吹き抜ける中、すみれの心臓はいつまでもドキドキし続けていた。
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