バンパイア君は私に甘々でメロメロ
翌朝。

眠ったような眠れなかったような夜を過ごし、すみれは少しぼんやりした頭のままオフィスにやってきた。
席につくと、周りはすでに朝の業務でざわざわしている。

「……はぁ……」

思わずため息をつく。
昨日の夜の黒川とのやり取りが、頭から全然離れない。

「おはようございます、先輩」

背後から、聞き慣れた低い声。
振り向くと、黒川がいつものスーツ姿で立っていた。
少し眠そうだけど、目はいつもより柔らかい光を帯びている。

「……おはよう」

すみれはなるべく平静を装った。
しかし黒川は、にやりと笑う。

「……昨日の夜、眠れました?」

「~~っ!!」

周囲の人たちはそれぞれの業務に集中していて、二人に注目はしていない。
なのに、すみれは慌てて声をひそめた。

「しっ……! 会社なんだから、そういう話はやめて!」

黒川は首をかしげた。

「え、どんな話ですか?」

「とぼけないで!」

すみれは赤くなった顔を隠すように、書類で自分の顔を隠す。

しかし黒川は、机に肘をつきながらすみれを覗き込むように笑った。

「……今日も、先輩、めちゃくちゃ可愛いです」

「~~~っ!! 黒川くんっ!!」

つい声が大きくなりかけて、すみれは慌てて黒川の口を押さえる。
黒川はくすりと笑いながら囁いた。

「仕事終わったらまた話しましょうね。昨日の続き」

「……もうここではやめて!」

すみれは机に突っ伏した。
そして思う。

(ほんと、黒川くんには敵わない……)

それでも、胸の奥がほんのり甘く満ちていくのを、止められなかった。
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