バンパイア君は私に甘々でメロメロ
金曜日まであと二日。
すみれの心は、黒川の言葉でずっと落ち着かないままだった。

(話って、なに……? どこかに行っちゃうとか……?)

そんなふうに思い詰めていた午後。

「椎名さん、ちょっといい?」

優しい声に顔を上げると、そこには早瀬が立っていた。
にこやかだけど、どこか真剣な表情。

「会議室、ちょっとだけ貸してもらったんだ。少し話せる?」

「えっ、はい……」

誰もいない会議室で、早瀬は椅子をすすめると、自分も対面に腰かけた。

「最近、椎名さん……仕事中に、なんだかそわそわしてるよね」

「……えっ」

「周りの皆も、ちょっと心配してたんだよ」

(うそ……周りにバレてる!?)

すみれが慌てて首を振ると、早瀬はふっと笑った。

「変な意味じゃないんだ。もしかしてプライベートで何かあったのかなって」

「そ、そんなこと……」


すみれは思わず息をのんだ。
早瀬は優しく笑う。

「いいんだよ。好きな人がいるなら、それで。だけど……ちゃんとご飯は食べて、寝るんだよ」

「……早瀬先輩」

「仕事でフォローが必要なら、俺を頼って。変な遠慮はいらないから。チームのモチベーションを保ちたいからね」

「わかりました。ありがとうございます」

すみれが頭を下げると、早瀬はにこっと笑った。

「……もし、俺でよければ。恋バナくらいは聞くから」

「え、いや、それはっ……!!」

すみれは顔を真っ赤にして、ぶんぶん首を振った。
早瀬は楽しそうに小さく笑いながら、そっとドアを開けた。

「じゃ、また仕事頑張ろうね。……顔色悪くなったら、呼ぶから」

すみれはその場にしばらく座り込んだ。
黒川のことがバレてるわけじゃないのに――なぜか、胸がいっぱいになってしまうのだった。
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