バンパイア君は私に甘々でメロメロ
13
金曜の夜。
駅から少し離れた小さな和食屋は、落ち着いた雰囲気で、料理もどれも美味しかった。
黒川は、会社の人の噂話や趣味の映画の話など、当たり障りのない話ばかりしていた。
すみれも、いつもの黒川の甘い視線に心をざわつかせながら、あえて深い話題には触れなかった。
なんとなく、お互い探り合っているような、微妙な空気がずっと漂っていた。
そして、食事を終えて、二人は店を出る。
夜風が涼しくて、少しだけ汗ばんだ肌に心地いい。
「……ごはん、美味しかったね」
すみれがそう言うと、黒川はふっと微笑んだ。
「先輩が美味しそうに食べてる顔、好きなんで、いちばん美味しいと思っているところにしました」
「……な、なにそれ」
すみれは視線を逸らし、思わず赤くなった頬を隠すように髪を触った。
しばらく歩き、駅に向かう交差点の手前で、黒川が急に立ち止まった。
「先輩」
「……なに?」
黒川は、ちょっとだけ視線を伏せ、それから真剣な目で見上げてきた。
「……うち、来ませんか?」
「……え?」
「話したいことが、あるんです」
黒川の声は低く、いつもの軽い調子とは全然ちがっていた。
「先輩にしか話せないことがあるんです。……だから、お願いです」
すみれは、黒川の顔をじっと見つめた。
その目は、本当に真剣で。どこにも冗談なんて見えなかった。
「……いいよ」
黒川の目がぱっと明るくなり、思わず笑顔がこぼれる。
また顔が熱くなりそうなのを必死でこらえながら、すみれはうつむいた。