バンパイア君は私に甘々でメロメロ

4

(……なんなのよこの人。後輩のくせに、からかってばっかり……)

すみれは、グラスの水を一口飲んで、彼の視線を感じながら、そっと顔を上げる。

「ねぇ、黒川くん」

すみれは、いつもより少し低く、落ち着いた声で呼んだ。

「ん?」

黒川は気を抜いたように応えるが――次の瞬間、目を見開く。

すみれが、肘をテーブルに乗せて頬杖をつき、じっと黒川を見つめていた。
その表情は、どこか挑むようだった。

「そんなに“美味しい”って言うなら……もう一回、なめてみる?」

黒川の喉が、ごくりと鳴るのが聞こえた。

「……え?」

「ほら、まだちょっと、傷残ってるし」

すみれはスカートの裾を少し持ち上げて、膝の絆創膏にそっと指をあてる。
その仕草が、わざとらしいくらい、艶っぽかった。

「先輩……それ、冗談で言ってます?」

黒川の声が、今度は本気で揺れていた。
目は笑っていない。どこか必死な、抑えたような熱が滲んでいる。

すみれは肩をすくめ、ふっと笑う。

「さぁ?どっちだと思う?」

その瞬間、黒川の瞳の奥に宿る何かが、ふっと熱を帯びたように感じられた。

「……仕返し、ですか?」

「ちょっとだけね」

すみれがそう答えると、黒川はふっと笑った――けれど、その奥に潜んだ狼のような気配に、すみれの心臓はまた跳ね上がった。

(やばい……今の、たぶん逆効果)

その直感は、あながち間違っていなかった。
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