夏休みの自由課題について
男はニタリと笑うと身をひるがえして小屋の中へと飛び込んだ。
男は知っていたのだ。

最近この森の中に小熊が迷いこんでいることを。
その小熊はきっと腹をすかせていて、小屋付近にいるだろうということも考え通りだった。

やがて小屋の外から女の悲鳴が聞こえてきた。
『いや! やめて!』
甲高い悲鳴に混ざって獣のうなり声も聞こえてくる。

そして血肉をむさぼる音さえも。
男は十分に時間をおいてから小屋の中にあった椅子を両手に抱え上げて飛び出した。

『なにをしている!』
女の足に食いついている小熊めがけて椅子を投げつけると、小熊はいともかんたんに退散していった。
『うぅ……』
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