「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
父王は、私を横に立たせたまま、ゆっくりとゼイン王の方へ顔を向けた。

「娘のリシェルだ。」

言いながら、父は微かに口角を上げた。

それは“誇り”と“駒を差し出す王”としての笑みだった。

ゼインの瞳が、私を射抜いた。

血の跡が残る顔、その奥のまなざしには、ただの敗者ではない光があった。

無言のまま、まっすぐに見つめてくる。

「わしには、娘が三人しかおらん。」

父王の言葉は淡々としていた。

「その中でも、リシェルが王太子だ。」

――そう、私はこの国を引き継ぐ者。

アルディナ王国の未来を背負う存在。

「……もしかして、父王。この者を私の配下に?」

思わず私はそう尋ねていた。

女王である私が戦に出ることはできない。

だが、彼のような冷静で胆力ある指揮官が傍にいれば、政も軍も回る。

必要なのかもしれない、この男の力が――そう思った矢先だった。
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