「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「いや、リシェル。」

父王の声音が、低く変わる。

「おまえの王太子としての任務を解く。」

「……えっ?」

胸の中で何かが崩れる音がした。

私が、王太子を外れる……?

「では、王太子は誰に……⁉」

戸惑いと動揺がこみ上げ、声を荒げてしまう。

そんな私の反応を面白がるように、父王は喉の奥で笑った。

「ククク……」

その笑いが、広間の静けさに不気味に響く。

「ゼイン。」

父王が名前を呼ぶ。

「おまえが――アルディナの王太子だ。」

その言葉が放たれた瞬間、広間が爆発したようなざわめきに包まれた。

「まさか!」「敵国の王を!?」「正気か、国王陛下!」

重臣たちの叫び、侍女たちの息を呑む音、兵たちの動揺。

全員が混乱の中に投げ込まれた。

私もまた、口を開けたまま言葉を失っていた。

敵国の王が、私の国の未来を担う王太子に?
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