「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
なぜ、そこまで……

なぜ、この男に――

ゼインは、そんな騒ぎの中でただ、静かに立ち尽くしていた。

何も言わず、何も驚かず。

まるで、すでにその“覚悟”をどこかで決めていたかのように。

「そしてリシェル。」

父王がゆっくりと私へ目を向ける。

「おまえが、その妃だ。」

「……えっ⁉」

思わず声が裏返った。

その言葉に、足元が崩れるような感覚を覚える。

気づけば、私は一歩、後ろへと下がっていた。

「敵国の王の……妻になれと?」

口から漏れた言葉は、かすれていた。

まさか、まさか、そんな采配を父がするとは。

この私が、ゼイン・ラグナリアの妃に――?

「なんという……っ」

怒りと困惑が胸を締めつけた。

だが父王は、どこか愉快そうに笑っていた。

まるでこの混乱すらも“愉しんでいる”かのように。

「ゼイン。」

父王が振り返る。
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