「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「えっ⁉」

思わず大きな声が出た。

結婚式もしていないのに、もう同じ部屋?

そんなの聞いてない。

私が言葉を探している間に、ゼインはため息をつくように言った。

「安心しろ。ソファーで寝る。」

そして、何の迷いもなくソファに向かい、どさりと寝転がろうとした。

……ちょっと待って?

その服、まだ泥がついてる。顔にも乾いた血がこびりついてるし、ブーツだって――!

「ちょっと待って!」

私は思わず声を上げていた。

ゼインが振り返る。無表情だが、少し眉をひそめた。

「まさか……そのままソファーで寝る気?」

「何がいけない?」

「……お風呂に入ってきて。」

「風呂?」

「そう。あなた今、泥と血で……もう、見るに堪えない。」

ゼインは数秒黙った後、ふうとひとつ息をつき、「命令か?」と尋ねた。

「お願い。」

私は小さく、でもはっきりと答える。
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