「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「……自分で洗うのか?」

「当たり前でしょ。」

思わず眉をひそめて言い返す。

「あなたの侍女は、もういないのよ。」

私がうんと頷くと、ゼインは無言で湯の縁に腰を下ろした。

そしてぎこちない手つきで石鹸を取って、スポンジを湿らせ、泡立てようと――

ぐし、ぐし。

……泡が、立たない。

ゼインの眉が寄っていく。

無言のまま、何度も試してみるけれど、上手くいかない。

「……はぁー」

小さなため息が、浴場の湯気の中に溶けた。

私は黙って見ていたけれど、もう限界だった。

呆れて、言葉が漏れる。

「……どこまでも、坊ちゃんなのね。」

そう呟きながら、私はゼインの手から石鹸とスポンジを取り返した。

「見てなさい。」

スポンジを濡らしてから、石鹸を丁寧にこすり合わせる。

すぐに、白くふわふわとした泡が立ちはじめる。

「こうやってやるの。」
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