「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「皆のために、最前線で戦った。それだけだ。誰も、命令はしていなかった。けど、誰かが盾にならなきゃ、国が潰れると思った。それから……周りが勝手に“王だ”、“国王だ”って持ち上げてきた。」

まるでそれが他人事のような口調だった。

だが私は、その言葉の奥にある重みを感じ取った。

血ではなく、戦場で選ばれた男。

名乗ったのではなく、担がれた王。

まさに、選ばれた君主。

私は言葉を失った。

同じ“王族”という立場で生きてきたけれど、

私の戴冠が決まったのは、出生と教育、ただそれだけの理由だった。

一方、この男は――

「……なんでそんなふうに、平然としていられるの?」

思わず、問いかけていた。

ゼインは湯気の中で、少しだけ目を開いた。

その瞳には、痛みと誇り、そしてほんの僅かな疲れが混ざっていた。

「だって……民を守るのが、王ってもんだろ。」

その一言に、私の胸の奥が、小さく軋んだ。
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