「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
ゼインの拳が震えているのが、私の位置からでも見えた。

彼にとって、それは自分の民が“奴隷”にされたも同然だったのだ。

「……それが、戦の勝者のやり方か?」

その問いかけは、広間の誰に向けられたものでもなかった。

けれど、空気を鋭く凍らせるには、十分すぎるほどだった。

私は、ただ彼の背中を見つめることしかできなかった。

この男は、やっぱりただの“敗者”じゃない。

“王”として――まだ、立ち続けようとしている。

「ゼイン王。」

その声が、広間に落ちたときだった。

落ち着いた、どこか凛とした声。

人混みの中から、一人の女性が進み出る。

「ここにいる女性たちは、皆……納得の上で、この場所にいます。」

その一言に、ゼインは目を大きく見開いた。

そして、次の瞬間――その女性に向かって、まるで吸い寄せられるように歩み寄った。
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