「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「生きていてくれたのですね……ゼイン王。」

女性の目にも、涙が浮かんでいた。

その声に、確かに愛情がにじんでいる。

「シシリア……」

ゼインの唇からこぼれた名は、やさしく、深かった。

「君も、生きていてくれたのか……」

そして彼は、その女性を強く、抱きしめた。

まるで、もう二度と離さないとでも言うように。

腕の力も、体の向きも、言葉よりも雄弁だった。

私は、見ていた。

その光景を、胸の奥がざわつくような感覚とともに。

これは――ただの再会ではない。

親しい者同士、旧知の間柄。

そんな生ぬるいものではない。

あれは、愛情の抱擁だった。

私は、思わず拳を強く握りしめていた。

政略結婚で結ばれたはずの男。

冷たくて、感情を見せなかったはずのその人が、誰かを、あんな風に抱くなんて。

心の奥で、何かがチクリと痛んだ。

それが“嫉妬”という感情だと気づくまでに、そう時間はかからなかった。
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