「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
それは、我が国アルディナの商人たちが喉から手が出るほど求めていた、透明で美しい宝石。

「若造め、蹴散らしてやるわ!」

父王の叫びは、すでに王というより征服者のそれだった。

思えば、すべての始まりは、ゼイン王がそのダイヤモンドの交易を断ったことだった。

どれほどの金を積もうと、ラグナリアはそれを国外に出さなかった。

「誇り」や「文化」などといった、理屈では測れない理由を盾に。

その一言が、父王の怒りに火をつけたのだ。

やがて、残りの兵士が戦場に加勢した。

そしてようやく、わが軍は勝利を収めることができた。

けれど、勝ったはずなのに、心のどこかが騒いでいた。

最前線で最後まで剣を捨てなかった男――ゼイン・ラグナリア。

彼は、処刑されることもなく、生かされたままこのアルディナへ護送されることが決まった。

なぜ、父は彼を殺さなかったのだろう。
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