「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
声が震えた。

死なないでいてくれた――それだけでも嬉しかったのに、彼は自ら結婚の衣装に袖を通してくれていた。

それは、覚悟の証。

未来を共に歩む意志の証だった。

ふと、テーブルの上に目をやると、見覚えのある銀鎖が視界に入る。

ゼインがいつも胸に下げていたネックレス。

けれど、その中央にあったはずの青い宝石は、粉々に砕け散っていた。

「これは……?」

問いかけると、ゼインは一瞬だけその視線をそらし、ゆっくりと口を開いた。

「王になった時に、象徴としてもらったものだ。」

「象徴……?」

「ラグナリアという国を背負う証だと言われた。だが、今の俺にはもう――必要ない。」

彼はそのネックレスを手に取り、握りしめた。

すでに割れた宝石は、まるで過去の誇りや痛みを象徴するかのようだった。

「……ラグナリア王は、死んだ。」

ゼインが静かにそう言った瞬間、私は思わず彼の顔を見つめた。
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