「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
私は、胸が熱くなるのを感じた。

たとえそれが形だけの結婚だとしても、この言葉だけで十分だった。

続いて、私の番だった。

手のひらに汗がにじむのを感じながら、私は口を開いた。

「私、リシェル・アルディナは、ゼイン・ラグナリアを夫とし……」

彼の手に、そっと自分の手を重ねる。

「敬い、支え――」

言葉が震えそうになるのを必死で堪えた。

この瞬間、誰の目がどう向けられていようと関係なかった。

私は、目の前の彼だけを見ていた。

「――一生、愛しぬくことを誓います。」

ぎゅっと、ゼインの手を握った。

彼の手が、同じ力で握り返してくれるのがわかった。

祭司の声が続く。

「では、指輪を。」

ゼインが、用意された指輪を私の指にはめた。

少しだけ手が震えていたけれど、それはきっと私も同じだった。

そして私も、彼の指に銀の輪を通した。

「これをもって、夫婦の誓いは成されました。」

重く荘厳な声が、式場に響き渡った。
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