「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「続きまして、立太子の儀が行われます。」

祭司の言葉に、私は小さく目を見開いた。

……えっ?聞いてませんけど?

祭壇の奥、整列していた廷臣たちが一斉に動き、厳かに壇上へと道を作っていく。

ゼインも一瞬、戸惑ったように私を見た。私も、ゼインも知らされていなかった。

いや、少なくとも私は、そんな予定など一切聞かされていなかった。

――というか、私の時、立太子の儀なんて……なかったわよね。

思わず、父王の方へ視線を向けた。

王座にゆったりと腰かけた父王は、唇の端をつり上げてクククと笑った。

「……あやつの、苦言に満ちた顔を見るのが楽しくてな。」

……性格、悪すぎる。

だけど、そんな父王の仕掛けに、式場の空気が一気に引き締まる。

場内に高らかに響く宣言の声。

「ゼイン・アルディナよ。」

静寂が支配する中、父王が立ち上がった。

「そなたを、このアルディナ国の王太子とする。」
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