「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
その声は、式場の奥にまで力強く響いた。

誰もが息を飲み、その決意を目に焼きつける。

「よく言った! 我が息子よ!」

父王が立ち上がり、笑いながら言った。

かつて、男子のいなかった父王は、それを不満とし、娘にだけでは国の未来を託しきれないと思っていた。

けれども今――娘婿とはいえ、この国に命を賭すと誓った男がここにいる。

ゼインという男を、王として殺すに忍びなかった。

彼の器を見抜いたからこそ、あえて“自分の息子”にしたのだ。

(おまえほどの男……殺すのは、惜しい。)

王は、初めて心の底から笑った。

それは国王の顔ではなく、一人の父親としての笑みだった。

ゼインの右手には、まだ治りきらない包帯の跡。

傷は癒えていないのに、その手で国を抱える覚悟をした男。

――この国の未来を、俺が守る。

静かに剣を握りしめるその姿に、私はただ、見惚れていた。

そして――祭壇の下で控えていた私と目が合う。

彼は小さく頷くと、優しく微笑んだ。
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