「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「……リシェルは、そんなに早く子供が欲しいの?」

私はその問いに、きょとんと目を丸くする。

「だって、子供を作るのは夫婦の義務でしょう? 王族としても、早く跡継ぎが欲しいし。」

そう言った瞬間、ゼインの動きが止まった。

彼はゆっくりと、私に背を向けたまま布団に身体を沈める。

「……義務か。」

低く押し殺した声。その響きに、私は胸がざわつくのを感じた。

――しまった。もしかして、彼を傷つけた?

「ねえ、ゼイン。私、ただあなたの子供が欲しくて……愛してるから、あなたとの子供が欲しいって、そういう意味で……」

必死に言い訳のように言葉を重ねる。でも、彼は振り向かない。

「うん、分かってるよ。」

その言葉だけが、背中越しに返ってくる。

分かってる? 本当に?

彼の声には、少しの棘と、疲れたような静けさが混じっていた。

「ねえ、ゼイン……あなたは、子供が欲しいと思ったこと……ないの?」
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