「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
問いかけてみたけれど、ゼインはそれに答えず、ただ静かに目を閉じた。

やがて、穏やかな寝息が部屋に満ちる。

私は、そっとゼインの背中に手を添えた。だけど、そのぬくもりが、ほんの少し遠く感じた。

しばらくしても、ゼインの姿が見えない。部屋にもいないし、執務室にもいない。まさか、またふらっとどこかへ――

不安を抱えながら私は、王宮の庭園へと足を運んだ。

そして、目を疑った。

木陰の先。春の陽射しを浴びるその場所に、ゼインと……シシリアがいた。

どうして?

私の心臓は、次第に早鐘を打ち始めていた。

「どうだ?結婚生活は。」

ゼインの声は、どこか穏やかだった。

「ええ、幸せと言えば幸せよ。」

シシリアは微笑みながら、目の前の花に手を添えた。

「旦那は、愛してくれるか?」

「……そうね。毎晩求められるもの。」

――毎晩?

その言葉が、私の胸を締めつけた。
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