「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「リシェル。」

静かな声と共に、ゼインがベッドに入ってくる気配がした。

私はそっと肩をすくめる。

「触れないで。」

絞り出すように言った私の声は、震えていた。

ゼインは、一瞬戸惑ったように動きを止め、やがて何も言わずに背を向けた。

――なんで。どうして、こんなことになってしまったの。

私だって、愛してほしかった。

ただ子供が欲しいなんて、それだけじゃない。

あなたのことが、好きだから。

あなたの血を引く子供を、私の腕に抱いてみたかった。

でもその想いは、きっと彼には伝わっていない。

目尻から涙がすっとこぼれ、枕に染みこんだ。

声を殺して泣いていたのに、次の瞬間、ゼインが私の背中に腕を回してきた。

「……っ。」

「リシェル?泣いてるのか?」

優しい声。だけど、私はもう抑えきれなかった。

「他の女を抱いてるくせに。」
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