「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
言ってはいけない言葉だったのかもしれない。でも、もう我慢できなかった。

苦しくて、悔しくて、哀しくて、体の奥からせり上がってきた言葉だった。

「知ってたのか。」

ゼインの声は、ひどく静かで低かった。

認めた。私は、瞬きもせず彼を見つめた。

否定しない。ならば、やはり――。

私はゆっくりと上半身を起こし、毛布を胸元で抱きしめた。

感情がこみ上げる前に、口を開いた。

「すまん。今日一回だけだ。」

ゼインはそう言いながら、私の肩に腕を回した。

逃れようとする間もなく、唇が重ねられる。

深く、強く、まるで何かを誤魔化すように。

「どうして?私じゃダメなの?」

心の奥に張り詰めていた糸が、ついに切れた。

涙ではなく、言葉が先にこぼれた。

「違う、違うんだ。」

ゼインは必死な声でそう言いながら、私をきつく抱きしめた。

でも、その熱はどこか遠くて、私の孤独を埋めてはくれなかった。
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