策士の優男はどうしても湯田中さんを落としたい
沈黙のまま、しばらく二人はグラスを傾けていた。

やがて祐が、わずかに声を落として言った。

「それに俺、この前のこと…誰にも言うつもりありませんから。」

瑠璃はびくりと肩を震わせる。祐の瞳は、まっすぐに彼女を捉えていた。

「むしろ…」

祐はグラスを置き、瑠璃の方へ身を寄せた。声がさらに低く甘くなる。

「もう、先輩のあんな綺麗な姿、誰にも見せたくないです。」

瑠璃は小さく息を呑み、祐を睨むように見返す。

「…何言ってるの、祐くん」

「本気ですよ。先輩のことになると、ちょっと独占欲が出るみたいです。」

祐の唇が、まるで触れそうな距離で止まった。

「俺だけが知ってる先輩…って思うと、ゾクゾクするんですよ。」

瑠璃は目を逸らそうとしたが、祐の視線に絡め取られて動けない。頬に熱が上っていくのを自分でも感じていた。

「…何言ってるのよ」

震える声でそう言った瑠璃の表情を、祐はひどく満足そうに見つめていた。
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