策士の優男はどうしても湯田中さんを落としたい
3
大きなプロジェクトが終わった夜。
安堵と疲労が入り混じる空気の中、祐は部の打ち上げに参加していた。
「いや〜中瀬くんがいてくれて助かったよ、ホント」
上司たちは上機嫌で、やたら祐の背中を叩いてくる。
酒が入ると特に。
祐を連れ回したがるのがこの部署の悪い癖だった。
「よし!二次会、キャバクラ行くぞ!」
──やっぱり。
祐は心の中でため息をついた。
キャバクラに行けば、確かに盛り上がる。
嬢たちは祐の顔を見るなり目を輝かせ、隣を取り合うように群がってくる。
場が華やぐのは間違いない。
だが、祐にとっては正直、面倒くさかった。
(気疲れするんだよな…)
それでも、会社員としての処世術は忘れない。
今日も、適度に笑い、当たり障りなく会話をし、酒は飲みすぎず。
隣の嬢に軽い冗談を言いながら、視線だけ店内を何気なく泳がせたとき──
遠くの卓で、一瞬だけ目が合った。
めちゃくちゃスタイルがよくて、黒髪をゆるく巻き、華やかなドレスを身にまとった美人。
男たちがその周りを囲むように座り、嬢の方も慣れた笑みを見せている。
だが。
(──え?)
祐の目が、かすかに見開かれた。
そこにいたのは──
湯田中瑠璃、先輩だった。
髪も、メイクも、服も。
普段の彼女とはまるで別人だ。
だが、視線の鋭さや、笑顔の裏の微かな緊張感は見覚えがある。
(なんで、先輩が…)
視線を逸らすべきか。
それとも確かめるべきか。
数秒の間に、祐の頭の中で様々なプランが瞬時に組み立てられる。
祐がひとつ息を呑んだ、そのとき。
──向こうの彼女の視線も、一瞬だけ、祐を捉え、少し笑った。
だが次の瞬間、何事もなかったかのように別の客に向き直り、華やかに笑ってみせる。
周りの上司も同僚も、誰ひとり気づいていない。
祐は手元のグラスをゆっくり回した。
(先輩。俺が知らない顔、見つけてしまった)
安堵と疲労が入り混じる空気の中、祐は部の打ち上げに参加していた。
「いや〜中瀬くんがいてくれて助かったよ、ホント」
上司たちは上機嫌で、やたら祐の背中を叩いてくる。
酒が入ると特に。
祐を連れ回したがるのがこの部署の悪い癖だった。
「よし!二次会、キャバクラ行くぞ!」
──やっぱり。
祐は心の中でため息をついた。
キャバクラに行けば、確かに盛り上がる。
嬢たちは祐の顔を見るなり目を輝かせ、隣を取り合うように群がってくる。
場が華やぐのは間違いない。
だが、祐にとっては正直、面倒くさかった。
(気疲れするんだよな…)
それでも、会社員としての処世術は忘れない。
今日も、適度に笑い、当たり障りなく会話をし、酒は飲みすぎず。
隣の嬢に軽い冗談を言いながら、視線だけ店内を何気なく泳がせたとき──
遠くの卓で、一瞬だけ目が合った。
めちゃくちゃスタイルがよくて、黒髪をゆるく巻き、華やかなドレスを身にまとった美人。
男たちがその周りを囲むように座り、嬢の方も慣れた笑みを見せている。
だが。
(──え?)
祐の目が、かすかに見開かれた。
そこにいたのは──
湯田中瑠璃、先輩だった。
髪も、メイクも、服も。
普段の彼女とはまるで別人だ。
だが、視線の鋭さや、笑顔の裏の微かな緊張感は見覚えがある。
(なんで、先輩が…)
視線を逸らすべきか。
それとも確かめるべきか。
数秒の間に、祐の頭の中で様々なプランが瞬時に組み立てられる。
祐がひとつ息を呑んだ、そのとき。
──向こうの彼女の視線も、一瞬だけ、祐を捉え、少し笑った。
だが次の瞬間、何事もなかったかのように別の客に向き直り、華やかに笑ってみせる。
周りの上司も同僚も、誰ひとり気づいていない。
祐は手元のグラスをゆっくり回した。
(先輩。俺が知らない顔、見つけてしまった)