AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 会話が聞こえる距離ではないので、なにを言っているかはわからないけれど。女性は若い女の子だ。甘めのコーディネートで決めた、女子力の高そうな女の子。

 宝瑠は食い入るように天喜とその子を見つめ、途端に「うわ」と顔をしかめた。

 嘘でしょ。あれ……、桃子だ。

 天喜は一生懸命に話しかける桃子を軽くスルーし、店員に注文を通していた。支払いを済ませ、商品を待っている間も、彼は話しかけられていた。天喜は首を傾げ、ぼそっとなにか言ったようだった。

 やがて天喜のオーダーした定食らしき料理が用意され、彼はトレイを手にこちらへ戻って来る——のだが。

 なぜか桃子も天喜のあとを追って、一緒に付いて来る。「絶対、あなたです、間違いありません」と彼女の必死な声が聞こえた。

 天喜は素知らぬ顔で桃子をかわし、ウォーターサーバーへ寄り道する。紙コップに三人分の水を入れて、宝瑠たちの待つ席まで戻ってきた。その後ろには、依然として桃子の姿がある。

 宝瑠は思わず日葵のほうへ視線を逸らした。

 ……嘘でしょ、なんで席まで付いて来るの?

「悪いな、宝。お待たせ」
「……あ、うん」

 宝瑠は俯きがちに顔を伏せ、天喜を視界に入れないように立ち上がる。無言で席から離れようとするのだが。

「先輩??」

 ふいに桃子が頓狂な声を上げた。
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