AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 小さく息をついた。宝瑠はうどんの載ったトレイを手に、天喜たちの待つ席へ戻っていった。

 *

 定時で帰宅し、天喜と暮らすマンションへの帰路を黙々と歩いていた。

 まだ六月下旬だというのに、すっかり夏が主役の顔をして、少し歩くだけで汗をかいてしまう。

 じりじりとした初夏の西陽が背中を灼き、ブラウスが肌に張り付いていた。

 ——「日葵ちゃんが預けられていた施設、どこにあるかわかる?」

 以前、小野寺に言われた言葉が脳裏をよぎった。あのときは、日葵の母親を探して、自分なりに納得しようと思ったはずだ。宝瑠は天喜と話し合おうと考えていた。

 けれど、知らず知らずのうちに、天喜への恋心が芽生えていて。そのせいで、向き合うべき問題を先延ばしにしていたのかもしれない。

 ……今日こそ、絶対に話し合う。

 宝瑠は腕時計を確認し、若干歩くスピードを早めた。

 マンションのエントランスをくぐり抜けたとき、右手奥に、ふと気配を感じた。郵便局の配達員が集合ポストの前で手紙を投函している。

 天喜の部屋、505号室のポストにも投函され、宝瑠はついでだからという気持ちでポストを開けた。
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