AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 新しくできた飲食店のチラシや、市の広報誌、知育を促すDVD付きの教材パンフレット。多種多様の郵便物を上から順番に眺め、気づけば一通の白い封筒を食い入るように見ていた。

 表には【久々津天喜様】と宛名が書かれ、裏を返すと差出人住所と名前が書かれている。住所は北海道のとある地域、差出人名には【児童養護施設「みどりの家」棚橋】と書かれていた。

 少しの間、息を止めていた。宝瑠はゆっくりと吐き出し、静かに深呼吸する。

 北海道……児童養護施設、みどりの家。棚橋、という人から。

 鞄の中からスマホを取り出し、カメラ機能を立ち上げる。表面の宛名と裏面の住所、差出人名を写真に収める。

 ここだという確信があった。

 日葵が赤ちゃんのころに、置き去りにされたという施設。きっとここに違いない。

 宝瑠は郵便物を手にエレベーターへ乗り込み、505号室の扉に鍵を挿した。

「ただいま」と声をかけ、三和土にパンプスを揃えた。「ママおかえりなさいっ」と日葵の声がすぐそばで聞こえた。

 脱衣所の戸が開き、お風呂あがりの日葵が抱きついてくる。シャンプーのいい匂いがして、それが妙に心地よかった。宝瑠は笑みを浮かべ、「ただいま、ひまちゃん」と繰り返した。

 気配と共に視線を感じ、目を上げる。
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