AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 日葵同様に湯上がりの蒸気をまとう天喜と視線が絡まった。「お帰り」と彼が呟く。宝瑠は一度跳ねた心臓を落ち着かせようと、曖昧に目を伏せた。

「た、ただいま」

 ……やばい。この人。

 なんでこんな、無駄に色気があるんだろう。

 顔を伏せているのに、依然として彼からの視線を感じた。宝瑠は目を上げて、「なに?」と尋ねた。

「……いや。母親らしい顔つきになってきたなと思って」
「えっ」

 ドキッと心臓が強く打ち、顔の中心がほんのりと熱くなる。

「良かったな、ひま。この調子だとママの記憶もすぐに戻りそうだぞ?」
「あーっ、パパっ! ママにはきおくそうしつのこと、言っちゃだめなのにーっ」
「あれ、そうだったっけ?」

「悪い悪い」と笑いながら、日葵と天喜が奥のリビングへ歩いていく。天喜が口から出まかせで言った“記憶喪失”の設定の話だ。思わず苦笑がもれる。

 宝瑠はふたりの仲睦まじい様子を見つめ、無意識に、胸に手を当てていた。天喜が赤ん坊の日葵を引き取ったから、今があるんだ。

 宝瑠はリビングに入り、所定位置に鞄を置いた。「なにそれ」と天喜に尋ねられる。

「郵便物?」

 彼の目が宝瑠の手元を捉えていて、「あ、うん」とやや硬い声を出してしまう。

「なんか色々届いてた」
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