15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
言葉の続きは聞きたくなかった。

私はゆっくりと、ベッドの上で彼に背を向けた。

「ひよりさん……?」

名前を呼ばれたけれど、振り返ることはできなかった。

優しかった手のぬくもりも、あの夜中の涙も、すべてが遠ざかっていく。

「大丈夫です。入院費も……私が払いますから」

声は、なるべく平静に。

けれど胸の奥では、確かに何かが泣いていた。

私は、ただの“迷惑な事故の加害者”だったんだ――

そう思った瞬間、目の奥がじんと熱くなった。

「今日は、俺、帰るけれど……」

そう言いながら、彼はそっと私の肩に手を置いた。

一瞬だけ、その手に力がこもる。

そして次の瞬間、抱き寄せられた。

近くで感じる体温と、スーツに混じる微かな香水の匂い。

そのすべてが優しくて、ずるかった。

「時間が空いたら……お見舞いに来るから。」

低く、穏やかな声。

それだけを残して、彼は私のもとを離れていった。
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