15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
玲音君が「お父さん」と呼ぶ声が、今も耳に残っている。

私のいる場所は、どこなのだろう。

「それで、その上の話なんだけど――」

そう言ったきり、玲央さんは言葉を失っていた。

私から視線を逸らし、口元を結ぶ。その表情には、戸惑いと痛みが滲んでいる。

どうして。何を言おうとしているの?

私は、テーブルの上にそっと手を伸ばし、玲央さんの指先に触れた。

「玲央さん。私……玲央さんの話なら、どんなことでも聞くから。だから……教えてください。」

自分でも震えているのがわかった。怖かった。けれど、黙っていることはもっと怖かった。

すると玲央さんは、なおさら苦しい顔をして、うつむいた。

……そして代わりに、隣に座っていた萌音さんが、静かに口を開いた。

「――私たちの結婚を、許してほしいの。」

その言葉は、カフェの静寂を破るには充分だった。

耳が、キーンと鳴ったような気がした。
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