15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜

第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

しばらくして、大学で誠一に会った。

「よう!」

気軽な挨拶。いつもの調子。

でもその笑顔の裏に、どれだけの気持ちが隠れているのか、もう私には読み取れなかった。

私は寂しく笑いながら、その隣に寄った。

「さくら、元気?」

「元気だけど……最近会ってないんだって?」

私はうなずきそうになったけれど、すぐには答えられなかった。

“あの夜”のことを誠一は知っているのだろうか。

知っていたら、こんなふうに笑えるはずない。

いや、もしかしたら、誠一にとっては、たいしたことじゃなかったのかもしれない。

そう思うと、胸が少し痛んだ。

私たちは一緒に学食の列に並び、トレーを手に取る。

いつもと変わらない、学生たちのざわめき。注文の声、揚げ物の香り。

でも、私の胸の奥だけが静かに冷えていた。

やがて、ふたりでテーブルに座ろうとすると、斜め向かいにもうひとつのトレーが置かれる気配があった。
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