15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
「一回分で足りる?」

「……うん。」

本当は二回分にしたほうが安心かもしれない。でも、怖さを先延ばしにしたくなかった。

玲央さんは慣れた手つきで、検査薬を他の商品と一緒にレジに持って行く。

会計を済ませると、袋を私にそっと渡してくれた。

「帰ったら、お茶でも飲んでから、ね。」

その優しい一言が、胸に染みた。

家に帰って、ふたりでお茶を飲んだ。

ハーブティーの優しい香りが湯気とともに広がり、少しだけ張り詰めていた空気が和らぐ。

ひと息ついて、私はそっと立ち上がった。

「行ってくるね。」

玲央さんは何も言わず、うなずいてくれた。

私が安心して背中を向けられる、そんな空気を残して。

トイレの中。
妊娠検査薬の袋を開けて、手を震わせながら準備をした。

……数分間。
世界が止まっているかのような、長い時間だった。
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