15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
──彼には、届かない。

これはもう渡すつもりなんてない。

いや、渡せない。

届けてはいけない、そんな気がした。

玲央さんは「示談にしてほしい」と私に言った。

それはつまり――きちんと終わらせたいという意味だ。

彼にとって私は、事故で出会った“助けてくれた人”であり、感謝すべき存在。

それ以上では、きっとない。

だからこそ毎日見舞いに来てくれて、花を贈ってくれて、優しくしてくれた。

私の方が、勝手に……思い上がっていただけだ。

「会いたいよ……」

小さく、声に出して呟く。

ほんの数時間前に「じゃあ」と手を振ったばかりなのに、

もう胸の中が空っぽで、あたたかな存在が恋しくてたまらない。

彼の声が聞きたい。

彼の笑顔が見たい。

――でも、それは叶わない願いなのだ。

メッセージカードを胸元に抱えながら、私はそっと目を閉じた。

明日は退院。

きっとそれが、本当の「さよなら」になる。
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