【シナリオ】となりの席の再挑戦(リスタート)
第11話
恋の予感と、医療チームの壁
月曜朝、講義の合間。
1年生のしずくに、グループ実習のメンバー発表が届く。
紙に記されたメンバー表。
そこに並んでいた名前に、しずくの目が止まる。
(しずく・心の声)
(……朝比奈 澪さん。
でも……私の班じゃない)
⚪︎同じ教室の隅、すでに自分のグループメンバーと話す澪の姿。
その穏やかな笑顔に、しずくの胸が少しだけ、きゅっとなる。
⚪︎午後。グループワーク中の実習室。
しずくの班は4人。
資料の読み合わせをしている中で、3年生の男子がふと口にする。
(上級生)
「朝比奈さんが来てくれてたら、プレゼン資料まとめるの早かったのになー。
さすが元・理学療法士って感じだし」
何気ないひとこと。
でも、その言葉が、じわじわと胸に染みる。
(しずく・心の声)
(私には、何もない。
知識も、経験も、人に頼られる自信も……)
⚪︎実習後の中庭。
静かな木陰のベンチに、ひとり腰かけてノートを開いているしずく。
そこへ、澪が現れる。
(澪)
「……いた。
実習、終わった?」
(しずく)
「……はい。」
澪が横に座る。
しずくは、少し目を伏せたまま。
(澪)
「顔、沈んでる。何かあった?」
(しずく・ためらいがちに)
「……澪さんのこと、みんなすごいって言ってました。
前職のことも、年齢も、頼れるって。
……私とは、全然ちがうなって」
言ったあと、ふっと目を伏せる。
(澪・やさしく)
「君が“違う”のは当たり前じゃん。
今は“違う”だけで、上も下もないよ」
(しずく・ぽつり)
「でも……私は、澪さんの隣に立てるくらいの人に、なりたいんです」
澪が、ふっと笑ってから真剣な表情になる。
(澪)
「じゃあ、俺も頑張らなきゃな。
いつか“しずくの隣に立てる自分”になれるように」
(しずく・驚いたように)
「……私の?」
(澪・ゆっくり)
「俺の中じゃ、君は“追いかける側”じゃなくて、
“歩幅を揃えたい人”なんだよ」
沈黙の中、桜の花びらがひとひら舞う。
ふたりの肩に、そっと降りる。
(しずく・心の声)
(追いつこうとする私を、
“隣を歩く人”として見てくれてる……)
しずくの目に、ふっと涙が浮かぶ。
それに気づいた澪が、やさしく笑う。
(澪)
「泣かせたら、最低って思ってたけど。
今のは、ちょっと、うれしいかも」
(しずく)
「……澪さんって、ずるいです」
⚪︎夕暮れの中庭。
ふたりの影が、隣り合って伸びていく。
しずくがそっと立ち上がり、
横に並んで歩き始める。
(しずく)
「……ちゃんと、隣に並べるように頑張ります。
だから、これからも教えてください。
勉強も、医学のことも、……それ以外のことも」
澪がその隣に立ち、肩が少し触れる距離で、同じ歩幅で歩き出す。
(澪・静かに)
「もちろん。いつでも、君の味方だから」