【シナリオ】となりの席の再挑戦(リスタート)
第12話

風邪ひきの朝、看病の距離



土曜の朝。大学は休み。
ふとスマホを開いたしずくに、澪からのメッセージが届く。

(澪・LINE文)
《微熱。たぶん寝たら治る。気にしないで》

(しずく・心の声)
(気にするに決まってるじゃないですか…!)


電車に飛び乗って、澪の部屋へ向かう。
呼び鈴を鳴らすと、少し遅れてドアが開いた。


⚪︎室内。薄暗い照明。
寝起きの澪が、くしゃっとした髪で玄関に立っている。

(しずく・驚き)
「うそ、顔赤い……!」

(澪・かすれた声)
「……うん。思ったより熱あるかも……」


足元ふらつく澪に、しずくがあわてて駆け寄る。
澪はそのまま、ゆっくりとしずくの肩に額を預ける。

(澪・寝ぼけ気味に)
「……来てくれたの、しずくちゃん?」



そのまましずくに身を預けた澪が、ふわりと笑う。

(澪・ぽつり)
「よかった……会いたかった、から……」

(しずく・耳まで真っ赤に)
「えっ……寝ぼけてません!?」

(澪)
「寝ぼけてるから、甘えてもいい?」


澪が、熱っぽい目で見つめてくる。
しずくは顔を真っ赤にして、うつむく。


リビングのソファ。
毛布をかけた澪に、しずくがおかゆを差し出す。

(しずく)
「熱、下がるまでちゃんと寝ててください。
あと、おかゆ冷めないうちに食べてください」

(澪・ふにゃっと笑って)
「しずくちゃんの声、薬より効く気がする」

(しずく)
「……甘やかしすぎですよ。寝ててください」


澪がしずくの手を、そっと取る。
熱で少し熱い指が、しずくの指にからまる。



(澪・熱に浮かされながら)
「君が看病してくれるなら……
ずっと寝たふりしてたい」

(しずく・慌てて)
「な、なんですかそれ!大人げないですよ!」


でも、しずくの頬は嬉しそうに染まっていて。
澪は満足げに目を閉じる。

(澪・ぼそり)
「……好きだよ、しずくちゃん……」


その呟きは、熱と眠気の狭間でこぼれたもの。

(しずく・小声で)
「……寝言だったら、ずるいですよ」


⚪︎夕方、うとうとしていた澪が目を覚ます。


ソファの下にしゃがみ込み、寝顔を見守っていたしずくと目が合う。

(澪・少し照れて)
「……俺、なんか変なこと言ってなかった?」

(しずく・目をそらして)
「……いっぱい甘えてました。
あと、“好き”って、寝言で」

(澪・一瞬沈黙して)
「……寝言にしておこうか?」

(しずく)
「やめてください、それ、本気で落ち込みます」


ふたりで笑い合う、ゆっくりとした空気。
薄紅の夕暮れが、カーテン越しに部屋を染めている。

(澪)
「じゃあ、ちゃんと言い直す。……好きだよ」

(しずく・驚いて)
「っ……!」

(澪・微笑して)
「元気になったら、返事、聞かせて。
ちゃんと目を見て、起きてるときに」


しずくは顔を真っ赤にしたまま、こくんとうなずいた。
心臓の音だけが、2人の間で聞こえていた。
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