私のテディベアに、私が溺愛されるまで
楓の「もっとくっつくとか、キスするとか」という言葉に、一朗は真っ赤になったまま固まっていた。

(無理だ……今ここでキスとか、心臓がもたねぇ……)

やっと自分の好意を自覚した一朗にとって、すぐに楓とキスを交わすなんて、照れ臭くて到底できそうになかった。

すると、楓が一朗の首に両腕を回し、甘えるように顔を近づけた。

「じゃあさ……今度の日曜、昼間からデートしよ?」

その声は小さくて、でも決意に満ちていた。

「一朗と、ちゃんと二人でデートしたいの」

一朗は一瞬、目をぱちぱちさせたあと、視線を外しながら小さく笑った。

「……お前、本当に強いな」

楓はにっこり笑って、一朗にさらにぎゅっと抱きついた。

「だって、好きな人のこと、諦めたくないもん」

その言葉に、一朗は息を呑んだ。

胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚。

そして、楓の体温が心地よくて、もう逃げる気力なんて残っていなかった。

「……わかった」

一朗は小さく笑いながら、ゆっくりと楓の背中を撫でた。

「今度の日曜、昼間からデートしよう」

楓の顔がぱっと輝き、瞳に涙がまた光った。

「ほんとに? ほんとにいいの?」

「俺だって……ちゃんと向き合いたい」

楓は嬉しさを隠しきれず、一朗の胸にぎゅっと顔を押しつけた。

「楽しみにしてるからね!」

一朗は照れ隠しに、楓の髪をくしゃっと撫でた。

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