女王陛下のお婿さま
 エメリナはそこまで言うとアルベルティーナを撫でていた手を止め、衣裳部屋に並べて吊るされているドレスに視線を向けた。そこには色とりどりのドレスが何着も並び、その一着に目を止める。

 それは純白のシルク布、ドレス全体に銀の刺繍で飾られたドレスだった。エメリナは、懐かしそうにそれを見つめた。

 アルベルティーナが女王に即位するずっと前――エメリナはそれとよく似たウェディングドレスで、クリストフと結婚式を挙げたのだ。

「……ねえ、ティナ。国民みんなを幸せにする為には、どうしたらいいと思う?」

「え……? それは――」

 ――皆に平等である事。実直で、嘘、偽りなく。国民を愛し、国民を尊び、国は人であると心に留めよ。

 アルベルティーナは女王に即位する時に宣誓した、国王の経典に書かれた訓示を思い出していた。それを言葉にすると、エメリナは微笑みながら首を横に振った。

「違うわ、ティナ。それは、国王の心得でしょう?」

「でもお母様……国王が国王たれば、国民皆が幸せに暮らせるのではないの?」

 それが国民の――皆の幸せになるのではないのだろうか。アルベルティーナはますます分からなくなってしまった。

「もっと凄く簡単な事なの。ティナ、まず貴方が幸せである事……国民が幸せでも、女王の貴方がそうでなかったら『皆』が幸せではないのよ」

 ――まず、自分が幸せである事……

 アルベルティーナはやっと分かった気がした。ファビオやエメリナが、自分に何を伝えようとしていたのか。
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