女王陛下のお婿さま
 彼の口から飛び出したのは、アルベルティーナが思ってもみない言葉だった。ルイはさらに続けた。

「貴方にお逢いして、一目見て感じました。ああ、僕と貴方は結ばれる運命なんだと……貴方も勿論、そう思った事でしょう……!」

「ええっ?! い、いえ、私は別に……」

「ああ……なんと奥ゆかしい……! 照れていらっしゃるのですね。でも、大丈夫です……さあ、貴方も素直な気持ちを仰ってください!」

 ルイはずいと彼女に詰め寄った。アルベルティーナは一歩後ずさったが、後ろにはミモザが咲きほこり、それ以上は下がれない。

「女王陛下……運命に抗う事はできませんよ……さあ、正直なお心をさらけ出して……!」

 すぐ目の前に立ったルイが、アルベルティーナに向かって手を伸ばした、その瞬間――何かが飛んできて彼の頭に直撃。余程痛かったのだろう。ルイは頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 彼の頭に当たった物が、すぐ隣に落ちている。よく見るとそれは、風呂で体を湯で流す時に使う木の桶だった。

「俺様の女王陛下に何してくれてるんだよ!」

 ルイを威嚇するようにそう怒鳴りなから、湯殿の方から現れたのは、ファビオだった。どうやら木桶を投げつけたのは彼のようだ。

 ファビオはまだこの城に滞在している。鏡の泉での一日が終われば帰ると言っていたのだが、結局アルベルティーナが湖に落ちた事でうやむやになってしまっていた。

 それに、湯殿がいたく気に入ったようで、暇さえあれば湯に入りに来ていた。今もアルベルティーナが調印式で構ってくれないので、一風呂浴びてきた所だった。

 彼の後ろにクラウスの姿もあり、思わずアルベルティーナは目をそらしてしまった。

 あれから……クラウスには会っていなかったから……

「……貴様……! 何者だ!」

 まだ木桶の当たった頭が痛むのだろう。頭を押さえながら立ち上がったルイは、ファビオを睨み付けた。
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