女王陛下のお婿さま
「俺か? 俺はナバルレテ国第九位王子、ファビオ・ナバルレテだ」
不遜な態度で答えたファビオに、ルイは驚きの表情を隠せなかった。ナバルレテ国はハレルヤ王国と肩を並べる大国で、この偉そうな男は第九位とはいえその王子だったのだから。
そんな国に比べたらヘーメルなんて小国は、吹けば飛んでしまう。
「お前こそ何者だ。俺の女王陛下に言い寄るなんて、いい度胸だな」
「……僕は、ヘーメル国第一位王子、ルイ・ファン・ヘーメル……」
目をそらし、消えそうな声で答えたルイに、ファビオはフッと嘲り笑った。
「ヘーメル国? 聞いた事が無いな」
ファビオの言葉に、ルイは悔しくて唇を噛み締める。二人のマウント争いは、どうやらファビオに軍配が上がったようだ。
「――お二人とも、もうそのへんにしてください! 私の城内で、争い事は許しませんよ!」
クラウスとの気まずさから逃げるように、アルベルティーナはファビオとルイの間に割って入った。もっとも、そうしないと今にも殴り合いを始めそうに見えたからだ。
「ファビオ王子! 木桶を投げつけるなんて、ルイ王子が怪我でもしたらどうするんですか! それに、私は貴方の所有物になったつもりはありません!」
ファビオを叱りつけると、アルベルティーナはクルリと体の向きを変え、今度はルイに。
「ルイ王子! 申し訳ありませんが、私は貴方に運命は感じていませんし、今は誰とも結婚する気はありません! 勝手に決めつけないで下さい!」
キッパリはっきりと言い切ったアルベルティーナ。その勢いにルイは呆然とし、ファビオは可笑しそうに笑いだす。言いたい事を言えてアルベルティーナが少しだけすっきりして辺りを見回すと、もうクラウスの姿は無かった。
クラウスは今はファビオに付いている。だからきっと湯上りの世話の準備で、ファビオの部屋へ行ったのだろう。残っていたのはファビオが祖国から連れてきた従者だけだった。