女王陛下のお婿さま

 午後になると、まだ早い時間から招待客たちが続々と城へ集まり始めた。城の上階の窓からアルベルティーナはその人混みを眺めていたが、群衆の中に探していたのはたった一人。……クラウスの姿を見つける事は出来なかった。

 やがて山の向こうに陽が隠れ夜の(とばり)が下りると、城の高台の鐘が鳴り、舞踏会の開催を告げた。

 普段だったら、アルベルティーナが舞踏会に参加する時は、宴の中盤で会場へ入る事にしている。あまり最初から参加すると、他の来賓が気を使ってしまい、楽しめないだろうという配慮からだった。

 しかし今回は一番最初に会場へ入り、訪れる人々を迎えた。今夜は歓迎の舞踏会で、主役は二人の王子なのだから。

 そしていつもと違う特別さは、もう一つ。

 国王を退位してからは、舞踏会などのパーティーには決して参加しなかった、父クリストフと母エメリナが参加しているのだ。会場入りした人々は、玉座の前に立っているアルベルティーナの隣に二人がいる事に驚き、歓喜の声を上げていた。二人はそれほど皆に慕われていた王と王妃だったのだ。

 やがて、大広間に来賓があらかた揃い、高らかにファンファーレが鳴り響いた。玉座の後ろにある大扉が開かれると、そこに一人の王子の姿が。

「――ナバルレテ国第九位王子、ファビオ・ナバルレテ王子のお出ましでございます!」

 扉の端に控えていたニコライが、ファンファーレに負けない高らかな声を上げる。同時に、会場の女性たちがキャア! というはしたない歓声で沸いた。
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