女王陛下のお婿さま
 アルベルティーナの言葉を合図に、楽師たちが演奏を開始した。音楽に合わせて会場の紳士淑女が踊り出す。色鮮やかなドレスがクルクルとそれに合わせて舞い踊る。

 舞踏会が無事に動き出したのを見届けたアルベルティーナは、玉座へ腰掛けようたした。すると、彼女の前にファビオがうやうやしく跪いた。

「アルベルティーナ女王陛下、どうかこの私を、最初のダンスの相手にご指名下さい」

 いつもは不遜でガサツなのに、今日は百八十度違うその礼儀正しい態度に、アルベルティーナは思わず吹き出して笑いそうになってしまったが、それをグッと堪えた。いくらなんでもこんな場面でそれは、彼の顔を潰してしまう。

「ではファビオ王子、私と踊って頂けますか?」

「恐縮です、アルベルティーナ女王陛下」

 アルベルティーナがふわりと手を差し出すと、ファビオはその手を取って立ち上がる。そして彼女をエスコートしながら広間の中央へ。まるで潮が引くように場所が空けられる。その中心で立ち止まり、向かい合って手を組むと、今まで流れていた演奏が一度止まった。

 そして二人の準備が出来た事を指揮者が確認すると、新しい曲の指揮を軽やかに始めたのだった。

 曲に合わせてくるりと回ると、アルベルティーナのドレスの裾がふわりと回り。同じようにファビオの長い上着の裾も翻る。踊る二人は音楽に合わせて軽やかで優雅で。眺めている客人たちはその美しさに魅了され、ほう、とため息を零した。

「流石、女王陛下だ。ダンスも得意だとは」

「あら、それはファビオ王子の事です。まさかこんなにダンスがお上手だとは思いませんでしたわ」

 踊りながら、周りには聞こえないようにそんな軽口を言い合っていると、玉座の横で佇んでいるルイの姿が目に入った。アルベルティーナとのファーストダンスをファビオにまんまと取られ、余程悔しかったのだろう。苦虫を潰した様な顔をしている。
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