女王陛下のお婿さま
(ルイ王子に気を付けろって……どういう事なんだろう? 企んでるって、無理矢理婚約しようとしてるって事……?)
玉座に座り考えたが、分からなかった。ファビオに聞こうにも彼は既にそばを離れ、クリストフやエメリナたちと歓談中だ。楽しげに笑っているので、それに割って入る事は出来なさそうだ。
ルイの方は、いつの間にか貴族の令嬢たちに囲まれていた。本人は困っているようだが、しばらくは逃げられ無いだろう。ファビオに対抗してすぐダンスに引っ張り出されると思っていたが、どうやらその心配は無さそうだ。
つかの間の休息。考えたい事はたくさんある。クラウスの事もそうだが、やはりさっきのファビオの言葉が気になっていた。
『――ルイ王子に気を付けろ。あいつは何か企んでる』
その言葉の意味を考えながら会場を見渡すと、今夜はやけに男性の姿が目につく。何か関係があるのだろうか?すると侍女のマイラが、トレイにグラスを乗せて持ってきた。
「アルベルティーナ様、こちらをどうぞ」
渡されたグラスには琥珀色の飲み物。甘い香りが鼻をつく。よく知った香りだった。
「これは蜂蜜酒? マイラ、どうしてこれを?」
ルイに貰った蜂蜜酒の香り。間違いない、昨夜も同じものを飲んだのだから。
「勿論、ルイ王子様からです。アルベルティーナ様がダンスでお疲れのようでしたら、お出しするようにと、舞踏会が始まる前に言われましたので」
マイラにそう言われルイを見ると、囲まれている令嬢の間からちらりと目が合った。そして頷くようににこりと微笑まれる。アルベルティーナもそれに会釈を返した。
(……余程この蜂蜜酒が御自慢なのね)
ヘーメル国の特産品だと聞いている。そんな事を思いながらグラスを手に取ると、一口。すぐに広がる、芳醇で濃厚な甘さ。これにファビオから貰ったあのほろ苦い砂糖菓子があればもっと良かったのだが、彼にはそんな細やかな気遣いは期待できないだろう。