女王陛下のお婿さま
「ダメです、出て下さい。女王陛下を助けたのは僕です。その手柄を、貴方は横取りするつもりですか?」
「手柄を横取りだと?! 今はそんなの関係ないだろ! 俺は彼女の容態を心配して――」
「――でしたら、やはり早く出て下さい。そんなふうに騒がれては、良くなるものも良くならない」
ぴしゃりとルイに言い切られると、ファビオは彼を睨みつけた。しかしそれ以上は何も言わず部屋を出て行った。
二人きりになった部屋は、しんと静まり返る。長椅子に横たわったアルベルティーナは、相変わらずハアハアと苦しそうな息遣い。ルイはそんな彼女に覆いかぶさるように屈むと、耳元で囁いた。
「どうですか、アルベルティーナ女王陛下。僕を選んでくださいますか?」
(……僕を、選ぶ?)
苦しくてもうろうとする意識の中で、アルベルティーナはルイに何を言われたのか、すぐには分からなかった。さっき微かに聞こえていたルイとファビオとのやり取りを思い出し、やっとそれが『婚約者を選ぶ』という事だと理解した。
だが、今はそれどころではない。ルイもそれを分かっているはずなのに、どうして今そんな事を尋ねるのか分からなかった。
「……いえ、それは……それより、早く、侍医を……」
荒い呼吸を繰り返しながらルイにそう訴えるが、彼は急ぎもせず、驚くような言葉を放った。
「侍医は来ませんよ」
「え……っ?」
「聞こえませんでしたか? 侍医は来ないと言ったんです」
念を押すような彼の返事に、アルベルティーナは耳を疑った。
だって……さっき大広間で誰かが侍医を呼ぶ声が聞こえていた。その声に誰も反応しなかったとしても、マイラも会場にはいた。彼女なら絶対に呼びに行ってくれたはずだ。
それなのに、どうして……
「おや? 不思議そうな顔をしていますね。では、どうして侍医が来ないのか、僕が教えて差し上げましょう」