女王陛下のお婿さま
 アルベルティーナの言葉にカッとなり、ルイは剣を彼女にグイと近づけた。それを制すように、今度はヨハンが。

「お止めください兄上! 女王陛下を亡きものにしても、兄上は国王にはなれません!」

「……どういう事だ」

「父上は――ヘーメル国王は今回、全権限を私に与えてくれました。ですから、私が決めます! 兄上の王位継承の地位を剥奪すると……!」

「剥奪だと?! 僕は第一位王子だぞ!」

 憤るルイに、ヨハンはゆっくりと首を振った。

「貴方はもう、何者でもありません」

 カラン、と乾いた金属音が響いた。それは、ルイの手から滑り落ちた、彼の剣が大理石の床に落ちた音。

 やがて彼の口から天を切り裂くような叫び声が。そのまま崩れるように膝を付き、頭を抱えうずくまってしまった。

「……僕は、王だ…………僕が……王になるんだ……!」

 うずくまる彼からこぼれ聞こえるのは、もはや正気を失ったそんな呟きだけだった。

「――アルベルティーナ!」

 ルイの動きが止まると、クラウスは彼女に駆け寄った。アルベルティーナは長椅子に突っ伏し、冷や汗をかきながらどんどん呼吸が荒くなっていた。抱き上げ体を仰向けにしたが、アルベルティーナの瞳は閉じられ意識も混沌とし始めているようだった。

「しっかりしろ! ティナ! 何をされたんだ……!」

 必死に呼びかけるが、もう彼女は返事すら出来なかった。

「――毒を盛られたんだ」

 クラウスのすぐ後ろに立ったファビオは、そういいながら懐から小さな包みを取り出した。絹の布で包まれたそれは、あの蜂蜜酒のつまみにといつかアルベルティーナに渡していた、砂糖菓子。

 ファビオはそれを手に、クラウスと入れ替わる。ファビオはアルベルティーナを抱きかかえると、砂糖菓子をその口へ含ませた。

「ファビオ王子、それは……?」

「黙って見てろ。じきに良くなる」

 砂糖菓子は口の中の熱と唾液で溶けだし、喉の奥へと流れ込む。ゆっくりとそれが体内へ吸収されてゆくと、アルベルティーナの呼吸が少し楽になったようだった。
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